木造建築に真摯に取り組むようになってから10年以上が経ちました。何度かくじけそうになったこともありましたが、自身の思いと都度折り合いをつけながらここまで設計をつづけてきました。
ここ数年は建築がうまくできるようになったと思うこともありますが、まだまだ下手だと思うことの方が多いです。建築が上手くなるというのは、コンセプトやデザインが素晴らしいとか、技術が凄いとか、そういうことだけではなく、環境に負荷をかけていないか、施主や施工業者さんが幸せであるか、地域の方々に受け入れられているか、などさまざまな指標の元にあると思っています。
特に木造建築に関しては、木材が信頼できるものであるか、地域の産業振興に貢献できたか、なども考慮すべき重要な課題だと思っています。
この10年は木造建築を設計する立場から森のことを知りたいと思ってきました。林業のことや製材業のことを知る中で、たくさんの方々にいろんなお話を聞いて木造建築の素晴らしさと難しさが分かった気でおりますが、これからも、まだまだ色々なところに出向いて知見を深めたいと思っております。
そして、これからは森から建築にまでやってきた木を通して、利用者に木の魅力を感じてもらいたいと思いますし、建築家として身近な生活環境が地球環境にまでつながっていることを、多くの方に、少しずつではありますが、伝え届けていきたいと思っています。
2025年秋 海田修平