社会と環境を変えること

建築は人間にとって快適な空間をつくるものですが、一方で単なるものの集合体と捉えることもできます。

建築家はどのような材料を使うかによって、建築家自身のスタンスや考え方を伝えることができます。

新しい素材を積極的に取り入れたり、新しい材料の使い方を発見したりすることによって、新たな需要を掘り起こしたり、新たなものの価値観を創造したりすることができる一方で、伝統的な材料や工法などを使うことによって、技術や材料の伝承が途絶えることがないように努めることもできます。これらも建築の重要な役割であると思います。

建築は関わる人やもの数が非常に多いため、法律が変わったり、風潮が変わったりすると、社会に影響を及ぼしてしまいます。つまり、建築は社会を変えることが可能な媒体であると考えることができるのです。

私は人間を取り巻く環境が少しでも良い方向に進むように建築を通して伝えたいと思っています。それは、自然環境だけでなく、人間の社会環境も含めてです。

日本のものづくりの普遍的な価値を大切にしたいと思うし、さまざまな生産者や作り手が試行錯誤を重ねているものを使うことで、そのようなメッセージを伝えられるのではないかと思っています。

例えば、森を美しく保つために山を管理している山守さんの木を使って、子供達が過ごす空間を作ることであったり、リサイクルされた材料を使って、美味しいご飯が食べられる場所を作ったりすることです。

ひとつひとつの建築でみたときは、施主の日々の生活に少しでも幸せな瞬間があるようにと思いながら設計をしておりますが、長い目でみた時には、メッセージを込めた建築をひとつずつ作ることによって、私たちや、子供達を取り巻く環境が、少しでも美しいものとなるように、また少しでも困難なものでなくなるように進んでいくことを願ってやみません。

建築の設計はまだまだ道半ばですな。

2023年夏